火器管制レーダー照射の件

軍艦火器管制レーダー照射の件ですが、そろそろ落ち着いてきたのでここでおさらいをします。

まずは事件の経緯です。ソースは報道であり裏を取っているわけではありませんので悪しからず。

  • 通常の哨戒活動中だった海自厚木航空基地第4航空群の所属のP1哨戒機(以下哨戒機)が、日本の排他的水域内の公海上を航行する韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦(以下駆逐艦)と韓国海洋警察庁の警備救難艦1隻を発見。
    火器管制レーダーが動いているのを目視で確認。駆逐艦が目視できない距離まで遠ざかった後、自機に向けた照射を機器で感知。ただちに退避行動を取った上で、無線で駆逐艦側に意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は複数回で数分間に渡り行われたが、砲身は向けられていなかった。
  • 岩屋毅防衛大臣が記者会見を開き事件の内容を明らかにした。記者団に「韓国側の意図ははっきりと分からない」としつつ、「極めて危険な行為だ」と批判した。
  • 防衛省は、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断し、火器管制レーダーの照射は広範囲の捜索に適するものではなく、不測の事態を招きかねない危険な行為であり、韓国側に再発防止を強く求めて行くことを発表した。
  • 韓国海軍は「火器管制用レーダーを作動させたことは事実だが、日本の哨戒機を狙う意図は全くなかった」と説明。
  • 金杉憲治外務省アジア大洋州局長がソウルの大韓民国外交部を訪れ、強い遺憾の意を表するとともに、再発防止を強く求めたが、韓国政府は「レーダー照射を行った事実はない」として日本が事実と異なる発表を行った事を批判。
  • 韓国の国防省副報道官は、定例の記者会見で以下を主張。
  1. 通常的に見れば、ある国の軍艦上空で、哨戒機が低空上を通過するのは異例的な飛行である。
  2. 韓国の駆逐艦は日本の哨戒機の特異な行動に対して、遭難船舶を探索するために運用していた追跡レーダーに装着されている光学カメラを回して、日本哨戒機を監視することになり、その過程で、一切の電波放射はなかった。
  3. 一部通信内容が認知されていた。しかしながら、通信強度があまりに微弱でノイズがひどかった。韓国が認知したのは「コリア コースト」という言葉だけであった。
  • 岩屋防衛大臣は「事実関係の一部に誤認がある」と記者会見で指摘し、防衛省名義の文書で「火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射された」と反論する声明を発表。

ざっとこんな感じですね。
韓国側の主張が二転三転していますが、現段階では、各レベルでの責任逃れというより、本当に混乱しているのかもしれません。

巷でもいろいろな意見が出されていますが、あまり言及されていない部分で筆者が疑問に感じるのは以下の点です。

  1. そもそも全レーダーを使用しなければならない、あるいは無線の感度が悪いほどの悪天候だったのか?
  2. 海自提供の写真には、韓国駆逐艦に国籍を示す物(国旗・海軍旗など)が見えないが?
  3. 北朝鮮の木造船救助のために、軍の駆逐艦が必要なのか?

まず天候ですが、これはデータではっきりしています。事件のあった時間、当該場所は天候が悪いどころか快晴で、波が立つような風もありません。また、無線の感度が悪くなる要素もありません。韓国側の主張通り、哨戒機が駆逐艦の直上低空を飛行して威嚇したのであれば、なおのこと無線感度は良好だったはずです。

写真については、あまり鮮明とはいえない(おそらく意図的に不鮮明なものを提供?)ため何ともいえませんが、国旗が掲揚されていないように見えますね。公海上(他国領海内ならなおのこと)を航行する場合は、識別のために国旗あるいは海軍旗などを掲揚するのは国際法でも定められており、これが無いものは国籍不明船として駆逐対象になります。また、国籍だけでなく、戦闘艦であればそれも明示しなければなりません。戦闘艦はいろいろな面で優遇されます。

駆逐艦の必要性ですが、実はここが一番気になります。大型船舶の事故や複数船舶の事故、海賊など武装艦による襲撃や極端な悪天候なら駆逐艦の派遣も納得できますが、今回はどれにもあてはまりません。
考えられるのは2点。

  1. 北朝鮮籍の船舶からの救助要請であり、念のために警備救難艦とともに武装艦である駆逐艦を派遣した。
  2. 何らかの要素(艦船そのものや作業など)を警護・隠匿する必要があり、駆逐艦を派遣した。

もし、国旗の不掲揚や火器管制レーダーの照射が事実なら、警護・隠匿と取られても仕方ないですよね。しかもこの対応ですから。
隣国ですから、双方とも穏便に済ませたいと考えてるはずなんですが、事件の経緯などの公表を差し控えてほしいとの要請もあったようですし、なんともねぇ。

 

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